「カサノバ」を見る。

 見たい映画は色々あるけど、ヒットしてる奴はまだ当分かかってるだろからいいや、ということで、一番宣伝が地味なやつを見に行く。コスチュームプレイだしほんとにヴェネチアで撮ってるというし。なによりカサノヴァだし。
 で、見た。わははははは、「回想録」に輪を掛けてお馬鹿だ。良くできたドタバタ喜劇ですな。身分や名前を偽って言い寄る恋人とか、知的な貴族令嬢が家族にも秘密の一面を持っているとか、初対面の許嫁に好かれたいという涙ぐましい努力とか、異端審問官の司教が偉ぶりながら繰り返す失態とか。ジェレミー・アイアンズって芸の幅広いなあ。同じヴェネチアで撮るコスチュームプレイでも「ヴェニスの商人」とは180度か捻り入って210度くらい違う役だし。「ヴェニスの商人」からの連想でもあるけど、これはシェイクスピア喜劇とかオペレッタあたりに原型がありそうな話じゃないかな。偽名とか、仮面を使っての一人二役とか、意に添わない縁談とか決闘とか。男顔負けの演説をぶつ男装の麗人、なんてのもそうだな。で、最後は恋人達はそれぞれうまくまとまって大団円。
 よく考えるとこの風景で人物が英語を話してるのが妙な気はするのだけど(まあイタリア語は分からないけども雰囲気として)お馬鹿ながらも洒脱な台詞を工夫しているらしくはある。下ネタ系の駄洒落を多用してるようだったし。
 話自体は大変よくできて楽しいので、史実(ちうか、「カサノヴァ」の資料としての「回想録」だけど)と離れていても構わなくはあるんだけども、敢えて明かな相違点を挙げると、この物語の舞台が1752年だかあたりなら、カサノヴァは既に一度ヴェネチアを離れて欧州各地を漫遊してるはず。実際1753年だかにはヴェネチアで捕まって(異端とか不義密通とかじゃなくて政治犯だったかな)数年ほど服役した後、大胆にも脱獄に成功してるのだが。(ということは、なんとか摺り合わせるならこの映画の話の後やっぱり捕まった、ってことになるのか)
 しかし、折角映画公開するなら、この機会に「カザノヴァ回想録」再版してほしいな。後の巻になるほど入手困難なのよ、ほんと。(それと、脱獄の下りが入ってる4巻が特に、かな)
#そういや「カサノバ」だけども、本編中にほとんど濡れ場がなかったなあ。ヒロイン達ともキスくらいしかしてないんじゃなかろうか。(ジョバンニは娼館で大変楽しんだらしいけども、肝心のシーンはほとんどなし)タイトルからそのあたりを期待した方には拍子抜けかも。
#ところで見てから知ったんだが、ヒース・レジャーは「ロック・ユー!」の主役をやった役者さんだったんですな。わあ随分育ちましたね、と言う感じ。(いや体格がそんなに変わってる訳じゃないんだろうけど;)
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