燕子花と青山放浪

 喉鼻を洗っておいた成果か、体調はどうにかなった。
 ので、天気も良い事だし特別展  国宝 燕子花図を見に南青山は根津美術館へ。表参道周辺の店構えの変さについうろうろし、余計に歩き回ったあとで到着。
 今回の公開が明日までとあって、美術館は随分賑わっていた。
 で、尾形光琳「燕子花」。これは実物の前に立って見ると、思ったよりずっと大雑把な――素朴なと言うべきか――描き方をされた絵であった。太い筆でべったりと塗りつぶしたようなタッチで、花びらの青に明暗二色、葉っぱはほぼ一色の緑で描かれている感じ。(花の咢部分だけはやや色調を明るくしてあるかな)同じ光琳の四季草花図や白綾秋草模様小袖なんかの繊細さに比べると、驚くほど単純化して描かれてる。
 近くで見ると「なーんだ」と思わないでもないけど、これはやっぱり意図的なものなんであろうね。燕子花の一本一本はシンプルだけど、全体としてはリズムのある並び方をしてるし。何よりこれは屏風絵なわけだから、全体を見たときの効果を狙ってのことなのでしょう。
 なんてことを考えながらそっちこっちから眺め、長いこと楽しんだことではあるけれども、やっぱり個人的には四季草花図や白綾秋草模様小袖の方が眺めてたのしいですな。華やかで上品で優しい感じ。まあ、陶器や小さめの掛け軸絵にラフに描かれている花とか寿老人なんかもそれはそれで楽しいけどね。これは当時の富裕層の漫画だったのかなあ、などと思うこと。
 さて、尾形光琳の展示品の他にも、根津美術館の収蔵品の仏像やらお茶器やら青銅器やら(なんかやたらと饕餮文のが多かったですな。周代あたりの青銅器ってこういうもの?)を見てから外へ出て、ついでにお庭ヘ降りて見ることにする。
 ところがこの庭がまた広いのだった。やあ都心のあんな場所にあんな広いお庭があろうとは。お茶室が3つだか4つだかあるのだが、そのいずれもが使われていない日で、お陰で「通行止め」表示も多いもので、通路をぐるぐる巡ったり池に渡されたいくつもの橋を渡ったりしているうちに、どの辺にいるのかどんどん分からなくなって来る。
 まあ他にも同じようにうろうろしてる人はたくさんいたし、そうこうしてるうちに出られたんだけどさ。でもあれ、木立のせいで見通しも悪いので、夕方薄暗くなってから迷い続けてたら結構怖いかもしれない。
 ああ散々歩いちゃったな、と思いながらも、南青山の街中に出たら更に道沿いのインテリア用品店など覗いて歩き回ってしまうのだった。
 さすがにこの後は、寄り道しないで自宅に帰ったことであった。あー、足痛いわ;