芋虫

 乱歩の名作短編ではなくって。
 いたんである。自宅リビングのフローリング床に。カブトムシの幼虫の子分みたいなの(体長7、8ミリ足らず)が。
 あ、ここまで読んで何人かちょっとひきましたね。でも幸か不幸か私は割と虫は平気なので。慌てず騒がずティッシュ片でつまみ上げ、可哀想だけどトイレに流罪
 ――と、思ったら。トイレから戻ってみると、さっきと同じような場所に、またいたんである。
 ……
 おかしーなー、流したはずだし。もしや何ぞホラーな状況の幕開け? などと思うも、冷静に考えれば元々二匹いたのに違いない。そういうわけで、これも再びトイレに廃棄。
 しかし、疑問/不審は残る。水場からも遠いはずの床の真ん中に、一体どっから。まさか買って帰った野菜類か何かに付いて? それともうちの床やら柱やらに、妙な虫が湧くようになった?
 ――と、考えているうちに気が付いた。先々週末にお山で拾って帰ってきた団栗。持ち上げてみると一個に穴が空いていて、下には細かな屑が積もっていた。ああ納得。
 原因が分かって良かったけど、侮り難し団栗。あんな小さいものにこんな扶養家族がいようとは――ってうちには不要だから!
(ああ、ひんやりした風が吹く……)