サントリー美術館にて「ガレとジャポニズム」展を見る

 かねて行こうと思っていたのだが、結局出掛けたのは終了1週間前の連休中だったのだった。
 館内は混み合って大変、というほどでもなかったが、連休でミッドタウンあたりを見物に来てなんとなく、という感じの方も多かったのだった。例えば近くを歩いていた年輩の男性などは「ガラスか?」などと言っていたもので、一体何見に入ったんだこら、とげんなりしたことであった。でもきっとあれは、奥様あたりの付き合いで分からないで入ってらしたのだろう。だとするとお気の毒ではあるが、無理して入らないで外で待ち合わせてくれればいいのに、と思うことだ。それからお子さん連れの中年のお父さんが、べったりガラスケースに指紋どころか掌紋つけながら見て回ってたもので、このやろ、と思ったことだったが。おそらくあんまり来ないんだろなあ、こういうとこ。でも宝飾店なんかでもあんなんなんだろか。
 ――と、まあ観客の一部はともかくとして、展示品は大変に良かったですよ。元々サントリー美術館は国内屈指のガレコレクションを保有してる所なので、年に1回くらいはガレその他のガラス工芸品を集めた展示をやるのだが。今回は特に「ジャポニズム」に焦点をあてるということで、ガレも参考にしていたらしい日本美術の流れとして、北斎とか尾形乾山とか本阿弥光悦なんかを一緒に並べていたのだった。ガレ作品との対応が分かりにくいところもあるのだが、個々の品々はそれぞれ眼福なのだった。
 特に驚いたのが、正阿弥勝義作の金工「瓜形花器」(1899年)。さしわたし1メートルほどもあろうかという糸瓜の上に、葉や巻きひげのある蔓があしらってあって、その上に遊ぶ虫や雀と、糸瓜の胴に開いた孔をくぐってのたうつ蛇がリアルに、生々しく象れているという業物。ぐわーこれはすごいわ、いくらでも眺めてられる、そっちこっちに小動物のドラマが、と感嘆し、ふと説明文を見ると「大英博物館」所蔵。
 うおお、よく貸してくれたなこんなの、というかよくこんなのが大英博物館にあるって見つけましたね、という感じ。だって大英博物館は、良い博物館だけどもあれだけ巨大だと、収蔵されたまま埋もれている品も多かろう、と思うもので。それに、日本美術工芸ならヴィクトリア・アンド・アルバートあたりのほうが整理されたコレクションがあるんではなかろうか、などと。
 この日本でのガレ展巡回の後、大英博物館に戻されたら、恐らく再び見ることはなかろうと思って、穴の開くほど(開いてるが;)眺めてきたのだった。だって大英博物館でも一般客に見えるとこに展示してるとしても、きっとすごく見つけにくいところだと思う……エジプトやメソポタミアギリシャ・ローマのフロアあたりに人気が集中してるので。
 で、「瓜形花器」はさておき(当然同じ部屋にあったヒトヨダケのランプとか茄子形花器とかヴェロニカの小瓶なんてのも愛でてから)更に奥へ進んだら、何度か見ているはずの「花器・蛾・昼顔」という水色の大きい花瓶があって、何故かこれがじわじわ来た。確かに繊細優美な造形ではあるんだけど、美術館・博物館で何か見ていてぐらぐらするなんてことは最近滅多にないんだけども。白血病を患ったガレの晩年の作、というあたりに何か刺激されたか、とも思うが、それにしては最晩年の「脚付杯《蜻蛉》」にはそこまでの反応もしなかったし。
 どうにも収まりが悪かったので、出口まで見てから引き返して、もう一回一通り眺め渡してから出てみた。で、ショップを眺め、喫茶室でガレ展企画のチョコレートケーキセットを食して帰る。美味しゅうございました。
 またガラスとかアールヌーヴォーとかの企画があれば来ることであろう。
 今月下旬からの「KAZARI」展は……どうするかなー……