「魔法にかけられて」を見る

 ディズニーは「ふざけるのもいい加減にしてはいけません」なんだな、ということが分かってきたので、実は期待していたのだった。予告からしておばかだったし。美術とかCGとかちゃんとしてるみたいだし。
 以下、ネタバレ防止のため折り畳み。
 や、こりゃいーわー。
 いや、ヒロインのおばかさ傍迷惑さ、王子の輪を掛けてのおばかさと、ヒロインに振り回される弁護士の苦渋がちゃんと描かれててよろしい。ヒロインのために苦闘するリスも愛らしい。あの動物キャラは「シュレック」あたりに出てそうな感じでもある。
 弁護士氏が「もう出てってくれ」と言ってたのにヒロインの寝顔見たらなんだか許しちゃう、というあたりには、こいつはっと苛々したけども(可愛いけど、そんな全て受け入れさせちゃうほどの寝顔には撮ってなかったようだし)、その後会う女性ごとに「なんてきれいな/素敵なひとなの!」と言うヒロインの純真さにはちょっと感心させられた。現実にはまずいないわなあ、素でこういうこと言う女って。そういうこと言ってくれるひとも確かにいるけど、どうしても言われる側が勘ぐってしまう部分もあるし。更に、公園で歌って踊ってみせるところを見てるうちに、これはこれで凄い才能かも、という気になってくるし。
 まあ、アメリカンだし、ディズニーだしな。日本ならさらに輪を掛けて浮くことであろうが、公園のパフォーマー達と一緒ならあれもありなのだろう。あの、公園でのレビューのシーンは、そのまんまディズニーリゾートのパレードになったりしないかしら、と思ったり。
 お伽噺のお姫様と王子様の恋はあんまりにもご都合主義で、そこには容赦なくツッコミが入るわけだが、ツッコミを入れる側のバツイチの弁護士もシニカルな守りに入りすぎて自分の恋愛がうまくいってない。ヒロインの能天気さも修正されていくが、同時に弁護士氏の哀しい現実主義も徐々に修正されていくのだった。ロマンチシズムを受け入れろとまではいわないにしても、感情のこもったコミュニケーション不足は拙い、という。当初、ヒロインのあまりの楽天性と頭に真綿の詰まったような夢見勝ちさに腹が立つが、恋愛とかコミュニケーションに関しては、彼女の素朴で直感的な方法のが正しいんじゃないか、と思うようになる。――と、これは対比する弁護士氏があんまりにもステレオタイプっぽく酷いせいでもあるが。
 にしても、最後はやっぱり「闘うプリンセス」になるんだなあ、昨今の映画の場合。いや、直接闘うわけじゃなかったけどね。
 あと、ヒロインに終止好意的な娘の出番がもっとあってもよかったか、とは思う。後半の「お買い物」の段になるまではあんまり目立った動きがない子なのだが、美容院で女の手管について語るあたり(どこで覚えるんだよ!;結局「ここまでしか知らないの」とか言ってるし!)で、こんな面白い子だっけ、と見直した次第。ところで、子供にあんな高額の使えるカード渡しといていいんか、おとっつぁん。きっと弁護士で高給取りなんだろうけども。
 それから、お伽噺の定石を崩すなら、折角だから魔女もなんぞ別の幸せをつかませてほしかったな、と。だってかっこいいんだもん、スーザン・サランドンの魔女。おばかなヒロインなんかよりよっぽどいい女に見えるし。やっつけられておしまい、じゃ惜しいよなあ、あれは。彼女もこっちでいい男を見つける/魔法の国の女王なんかよりもっと楽しそうな別の生き甲斐を見つける、とかいう展開を期待したんだけど、ちょっと拍子抜け。
 にしても、こっち=現実の世界に来ても、ヒロインの「動物寄せ」(ネズミ、鳩はともかく、蠅とゴキもか!!;)や、魔女の魔法がきっちり効くのがどういう仕組みなのか大変気になる。ナンシーの持ってった携帯もちゃんと繋がるみたいだったし。加えてあの「お掃除」で綺麗になった部分は、ネズミや虫の唾液まみれなんじゃ、とか、余計な細かいところが気になる私であった。
 最後に、この映画で一番美しいのは、もしかするとエンディングの背景かもしれんですよ。なんだかやたら美術に凝ったアニメになってたようでしたが。アール・ヌーヴォー調の唐草模様が動いてたから個人的に気になったということもあるけども。