国立西洋美術館にて「ウルビーノのヴィーナス」展を見る。

 ウフィツィからとかイタリアのそっちこっちから、ヴィーナスの絵や彫刻を集めた展示会だ、というので行ってきたのだった。おりしも桜が満開になった週末であって、上野は大変な人出であった。君ら他に行くとこないのか。私もだが。
 で、西洋美術館はかなりゆったり展示するから点数としてはどうかな、と思っていたのだが、なかなか質量ともに結構でございました。古代ギリシャ・ローマ彫刻や、アンフォラ(絵入りの壺ね。割と黒っぽいやつ)、装身具のレリーフなどに始まって、中世の書籍(手書きの写本なども多し。金彩なども施してあったから、時代を考えると実は一財産のシロモノであろう)やルネサンス以降の絵画、彫像、織物などが並ぶのであった。並べてみると、ヴィーナスも色々だねえ、ということが分かる仕組みなのだった。
 例えば古代ギリシャ彫刻とか、またルネサンス美術なんかでも、ヴィーナスの肢体は意外なほど胸が小ぶりだったりするのだ。腰から太腿のラインはかなりゆったりとやわらかく造形されてるんだけども。このあたり、時代と供に美やエロスの感覚は相当変化しているのだなあ、と思うことだ。また息子のアモール/エロス/キューピッドとともに描かれている図も多いのだが、その関係を思わせる表情は、やわらかく微笑んでるものから、なんだか嫌そうなものまで様々。(おそらくあれはバックボーンになる物語があるんだろうな)「美」や「愛」に重ねるイメージによって、女神も様々な様相を取りうるということであろうか。
 しかしこれら美術品の所蔵元が結構すごい。ティツァーノ作「ウルビーノのヴィーナス」はウフィツィからだそうで、よく出したなと思ったけれども(国立西洋美術館サイトによると。これもかなり特別な貸与許可ではあるらしい。でも以前のダ・ヴィンチ「受胎告知」に比べたら、展示会場での扱いははるかに開放的でしたがね)他にもアカデミア美術館とかどこだかの大学とかいうのも多かったのだった。「受胎告知」には及ばないにせよ、おそらくイタリアでは国宝・重文クラスのものも多かろう。
 しかし見る側がそこまで分かってるとは限らないんで。「おお立派な尻だの」とか「あたし今のままでいいんだって気がしてきた!」とかくらいの感想だったりするのだった。――まあ、製造当時だって、きっと「うちの彩りに綺麗で堂々としてちょっとばかりエロいものを」くらいの意図で作られてたりしたんじゃないかと思うが。
 一回りして図録を買って、ついでに常設展も流し見て来たのだった。常設展では来館者にカードを配って、景品付きクイズラリーなんてこともやっていた。(ちなみに景品は小ぶりのスケッチノート)
 常設展はまだ暫定的な短い順路の案内になっていた。現代絵画を展示している新館が、2009年4月まで改装工事中なのだとか。まだしばらくはコンパクトな展示で我慢、とのこと。あの先の順路にあった絵は、今はどこぞに貸し出したりしてるんだろうかね。ピカソとかブラックとかポロックなんかもあったような気がするのだが。