ワールドコン4日目・12:00〜14:00

 イタリアの編集者/作家マッシモ・スマレ氏*1をお迎えしての企画「幻想と怪奇」へ。スマレ氏編集の幻想小説短編集「ALIA」には、日本からは異形コレクション収録短編などを収録しており、その他にも異形執筆陣の参加が多いのであった。そういうわけで、イタリア出版界でのSF、幻想文学の状況と、イタリア及びその他欧州諸国からの日本の幻想文学への関心について。スマレさんはイタリアの関連書籍や、プロジェクターで見せるための表紙画像(タイトル・著者名の日本語訳付)などを用意しておられ、日本語にも不自由していない方なので、かなりつっこんだ質問にも答えておられた。イタリアの問題としては、市場自体の規模が小さく幻想文学としての出版が難しいことと、SFやファンタシィにしても米国の流行(ハリウッド的なもの、ハリー・ポッターロードオブザリングに似た傾向のもの)に寄りがちなところがあって、ユニークな作品の出版は厳しい、とのこと。そもそもイタリアでは専業作家は存在しないのだそうな。かなりヒットした作品の著者でも、本業は他に持っていての副業としての著作だそうで。
 あと、出版社や新聞・テレビ等のメディアの政治的傾向が、紹介する作品内容を選んでしまう、という部分もあるとか。SFは科学技術による革新性を描くので左派傾向、ファンタシィは王侯貴族の正当性を描く(場合も多い;)ので右派傾向、なんだそうな。
 しかしこの部屋、パネリストが浅暮三文田中啓文山之口洋井上雅彦、(予定にあった牧野修氏と金蓮花氏は欠席)と、かなり異形コレクション傾向の上、会場には北野勇作小林泰三太田忠司篠田真由美高野史緒ら諸氏がおられるという、大変作家率の高い部屋となっていたのだった。
 終了後、田中啓文氏と小林泰三氏にサインをいただくことができた。田中啓文氏はこの企画には「SF代表」という位置づけで呼ばれていたらしいのだが、実際には話の流れからなかなか発言の機会が回って来ず、「あの流れでは絡めんかったな」と言っておられた。が、「別に何でも質問すればええがな、パスタうまいんかー、とか、ピザうまいんかー、とか」とつっこまれていた。
 ううむ。あの展開でその質問はしにくかろうとは思うけども、それはそれでありだったかも。

*1:公式サイトの企画紹介やプログラム等は「マッシモ・ソマレ」となっていたようですが、正しくは「スマレ」氏です。当日の会場の名前表示も「ソマレ」になってたので、ご本人が一生懸命ペンで一番上の横棒と右下の斜め線を書き足して「ス」に直しておられました;