「クィーン」を見る

 上映館数は多くないながらも、なかなか評判が衰えないようなので、上映してるうちに見ておこうと思っていたのだった。元より英国ネタは好きだし。
 で、見てみたら。
 うむ。思いの外地味に慎ましいお話でありました。世間が「英国のバラ」ダイアナ妃の死に関する狂騒状態にある一方で、永らく女王をはじめ、ロイヤルファミリー一同は、スコットランドはバルモラルの領地にこもったまんまなんですから。それはまるで、別世界の出来事のように。(その落ち着きっぷりというか冷ややかさはどうよ、いや会ったこともない人の死にここまで嘆き悲しむ方がヒステリーじゃ? というのがこの映画のキモなわけね)
 言ってみればこれは、英国王室版「お葬式」なのだなあ、などと、思ったことでありましたよ。ブレア首相へのチャールズ皇太子からの「緊急の」電話の内容が、「今日はありがとう。今後若い者同志協力できると思うけど?」だったり、国葬には皇太后の葬儀用の式次第を使う、とか(しかも理由が「予行演習が済んでるから」)、世界中から民間の「セレブ」が参列します、といって、参列者のリストに「ゲイばっかりじゃないか」とか(エルトン・ジョンあたりのことかな;)、首相官邸から女王のスピーチ原稿の訂正を促されて「大丈夫ですか?」「断れる?(反語)」、等々。
 それにしても、ヘレン・ミレンは美しい。お年を召した役だけれども、ずっと毅然としているし。一貫して押さえた表情の演技なので、すぐに分かりやすい共感を得るというタイプの人物造形ではないのだが、途中一箇所だけ一人になって表情を崩すところがあるのが却って効く。(にしても、鹿……m(T△T)m)
 女王に限らず他の出演者もモデルの特徴をおさえているし(容貌で言うなら特に似てるのはシェリー夫人かなあ。もともとああいうルックスの女優さんなんだろうか)ニュース映像の多用とあいまって、途中ふと、フィクションだってことを忘れそうになるくらい。
 しかし、そのままではないにしても、こういう葛藤やら軋轢やらがあったであろうことは想像に難くない。現在英国王室の人気が衰えないところを見れば、うまく切り抜けたのであろうけれども。
 と、見終わった後でふと、心配になったりもするのだった。我が国は、あの国の王室以上にしきたりと外聞に縛られた、デリケートな位置づけにある君主一家を頂いているのだったね、と。
"The Queen"英国公式サイト