見えない

 東京タワーの上半分と、六本木ヒルズ森タワーの頂上が。

 と、いう光景を窓から眺め、用事を済ませて戻ってふと見ると、東京タワーは8割方が霞の中に沈んでいた。
 高層建築が順繰りにどこか異界へ消えていっては、リフレッシュして帰ってくるのかもしれん、などと妄想する。
 いやあるいは、実は上の方がどこか異空間に入り込んでいるからこそ、あんな高い建物が無事に建っていられるのかも。
 そんなわけあるかい、と言われるかもしれないが、じゃあどうやって建ってるんだ地震にも倒れずに、と訊かれたら、確信を持って答えられる人はごく僅かじゃなかろうか。千人に一人二人くらいか。
 レオナルド・ダ・ヴィンチニュートンが聞いたら嘆くだろうが、迷える衆生なぞいつの時代にもこんなものかもしれませんぞ。