「硫黄島からの手紙」を見る。

 1日は確か割り引きねっ、ということで、年始帰りに都内映画館で観賞。いわゆる戦争物はまず見ないのだが、あまりにも評判がいいもので、見ておくべきかと思って。
 で。
 いや。
 ひどい話でした。

 まあ日本軍二万余名が全滅することは始めっから分かってるんだから、ひどい話で当然なんだけど。あんまりいい話に描かれていたら、それはそれで欺瞞かもしれん。
 しかし、これは、酷い話のつるべ打ち。誰一人として幸せにならないし。
#いや、なんとか生還出来たヒトは、後年幸せな時期も来たとは思うけどね。でもこの戦場で経験したことは、どう考えても後年の幸福にさえ影を落とすであろうし。

 基本としては「持ち上げて、落とす」「予想は裏切る」「運命の皮肉」の繰り返しなんですが、そういう細かい揺さぶりを丁寧に繰り返し掛けてくるので、私としては泣ける以前に打ちひしがれたようになりましたね。
 ほんとに明るいシーンは、序盤のごく一部しかないですな。冒頭から労役の疲労と敵襲の不安に揺さぶられているわけだし。残酷さの絡まないシーン(例:穴掘り作業にぶつぶつ言ってたら背後に上官が居て折檻されるとこ、射撃訓練で外しまくるとこ、便器の汚物を捨てに出て空襲に遭うとこ)では、ちょっと昔見たドリフやモダンチョキチョキズの戦場コント、スネークマンショーの「急いで口で吸え」等々を思い出したりしたけども、話はどんどん重くなるし。しかも、ちょっとでも気持ちを寄せられるようなものは、尽く後で壊される。それも割と早くに。
例:

  • 「父島から運ばせました」→最初の空襲
  • 「これで弾ぁ避けて」→「潔く名誉の」
  • 「戦車の下に潜り込んで」→「お前等の戦車はどこ行った!」
  • 「戦場じゃ、敵以外に恨まれることはないもんな」→「メシを喰わせてくれるらしい」「横浜なんだ、遊びに来いよ」→「こうしよう」
  • 「福島、もういい」→銃撃→「ここはまだ日本か」
  • 「もうたくさんだ」→「もう逃げることもできない」→「シャベルを放せ」

 探せばもっとあるだろうけど。
 しかしまあ、この後味の悪さの分だけ、じわじわと重いインパクトではある。
 お薦めできるかと言われると、個人的には複雑。だってこれは、「愉しむ」とかいう作品ではないですぞ。
 もし見に行くならば、体調を整えて、精神状態も明るく健康な時を選んで行くことをお薦めします。