「ポンペイの輝き」展を見る

 どうしようか、と思っていたのだけども、会期終わりに近付いて廉価でチケットが入手できたもので、渋谷BUNKAMURAまで見に行く。
 西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火は、ポンペイのみでなく周辺のいくつかの小都市を高温の噴煙と火山灰の中に飲み込み、現地に残っていた住民のほとんどはほぼ逃げる間もなく高温と降って来た灰や擽の重み、あるいは窒息で死亡したんだそうな。それらの町はそのまま数メートルから数十メートルの火山灰に埋もれたまま千数百年が経過したので、宝飾品や日用品などもほとんどその瞬間のまま手付かずで残っていると言う訳である。
 こういう展示にくるのは勿論高価なものや美術品として美しいもの、加工技術として面白いものがまず来る訳だけども、それにしても電気炉やバーナーや電動工具などがない古代ローマにも、かなり精緻な貴金属や大理石の加工技術があったらしいのが興味深いですな。で、いくつも別々の場所から同じようなデザインの装身具が出て来るところからして、どうやら流行等もあったらしいことがわかる。(地域の加工技術や流通の制約もあったかもしれんけど)
 しかしな。美術工芸品的価値や当時の生活を知る手がかりとして興味深いという面白みの他に、これを持ってた人はみんな一瞬にして不慮の死を遂げてるんだよな、と思うと色々複雑であったり。勿論千数百年から昔のことなんだけども、ここに並ぶ品は思えばみんな遺品で、ものによっては身に着けていたものを外してきたわけだから、持ち主の血肉が焼きつけられていた可能性も大なのだった。
 これをドライに展示し鑑賞させるというのは、さすがに千数百年経ってないとできないことであろうかね。さすがにこれだけ経ってると、遺族がどうこう言う可能性もまずないしね;
 ときに大プリニウスって、被災地の救助に行こうとして噴煙に窒息して死んでるんですな。(ナポリ湾の対岸の街の総督かなんかだったそうな)いわば二次遭難でしょうか。当時としても、火山の威力がそこまでとは知られてなかったんでしょうね。博物学者として評価された人間が、知識の及ばない自然現象のせいで死んだというのも、なんだか皮肉なことだけど。
 さて一通り見た後、ちょっと考えたが今回は図版は買わず、ポンペイ関連グッズも買わず、ただミュージアムショップでふと誘惑された、名画のステレオグラムカードを二枚ほど買ってしまう。エッシャー「上昇と下降」とボッス「快楽の園」。や、こういう怪しい絵が好きでねえ。ボッスやダリの絵の怪物フィギュア等も見る度に誘惑されるのだが、まあこちらはそこそこ良いお値段だからね。
 出てから、カフェ・ドゥ・マゴでポンペイ展企画ケーキセットのティラミスを食して帰宅。や、流石に美味でしたよ。ところでカフェ・ドゥ・マゴにはシャルトリューズやらリカールやらペルノーやらのリキュールも置いてるのですな。グラス一杯45mlで数百円〜千円弱くらいだけども。(さすがにエリベジとかアブサンはなかったが)いつか試してみよかなあ。