幻の猫

 久しぶりに今朝見た夢の話。
 なぜか実家にいて、玄関先に出てみると、足下にどこからか、白黒長毛種の立派な猫が現れた。鉢割れというか鬼太郎の前髪のような黒の入り具合だが、毛も綺麗に梳かれてつやつやしていて、どこか近所の飼い猫らしい。
 逃げるふうもないので近付いてみると、迷子タグ付の首輪だけでなく、右目にプラスチック製の片目用バイザーのような妙なものをつけている。といっても無色透明の球面が右目上の部分に被さっているだけで、下はというと目の部分だけ穴が開いているので目の周りは邪魔だろうが、普通にものは見えるらしい。
 こんなものを着けさせるのはどんな家か、と迷子札を確認すると、うちの名字と「別宅」の記載が。
 なんだうちで飼っていたのか、でも別宅なんてあったっけ、と思ったが、すぐに、そういや近所の二、三軒先の家が空き家になったので買い取って作業場にしたとか言ってたっけ、と思い出す。(現実にはそういう事実はなく、何の作業場かも全く見当は付かないが、夢の中では納得している)
 外飼いは感心しないけども、まあ田舎の事だしな、と思ったところで。ふと、この猫を飼っているくらいならもしや、と思い、建物を回り込んで反対側の庭に行ってみる。
 と、期待した通り、保父猫が座ってくつろいでいた。少し離れたところにはマダムもいたのだった。
 なんだ、ここにいたのか。と、思ったところで目が覚めた。
 現実には、実家は動物を養うというのが全くだめなところなので、うちの猫達も連れて行ったことは一度もない。猫達も、旅行中病院やペットホテルに預けた時以外、離れて暮らした事はないのだ。
 保父猫は五年ばかり前に姿を消したきりだが、マダムはこのときも私の脚の上でごろごろしていたのだった。