「ルパン」を見る

 調べてみたらもうじき終わっちゃうらしいので(他のとこに移るだけかもしらんが)「チョコレート工場」を後回しにして見に行くことにしたのだった。
 だってさ、アルセーヌ・ルパンですぜ。舞台はベル・エポックなんですぜ。しかもカルティエ協力ですってよ奥様!(<誰だよ;)
 で、体調今一なのに行ってきました。
 やー。面白かったなあ。「ルパン(lupin)」は「ルピナス(lupinus)」だったのか! とか。
 もとよりルパンとホームズと少年探偵団は幼少〜青年期の血肉になってる読書体験なんで、それだけでも面白いだろうとは思ったけど、アクションや映像も楽しみましたよ。特に美術関係は美しく丁寧に作ってある感じがしますな。紳士淑女(特に伯爵夫人)の服やアクセサリは流石に凝りまくり。あの唐草模様型にダイヤモンド連ねたようなチョーカーとかどっかで見たなあ、などと思っていたら、カルティエアーカイブコレクションから取っているとのことなので、どこやらの宝飾品展で似たようなのを見たらしい。一番ちゃちに見えるのが財宝の鍵を握る十字架だってくらいで。(金色が派手派手しいからか)残念ながらあんまりアールヌーヴォーのガラスは出てこなかったけど(盗みに入った先かどこかのランプシェードがティファニーらしかったぐらい。花瓶なども概ね陶器だったような)まあ、あれは実は流行した期間も割と短かったそうだしね。
 それにしてもどうしてこれが当たらなかったか、と思うこと。もしかして面白いと思う私の方がお手軽なのか、とも考え込んでしまうのだけど。まあ「顔のない死体」(足の中指は出てこない)とか「美貌の悪女盗賊」とか「宝飾品を組み合わせると財宝への手掛かり」とか「義眼」とか「洞窟内に降り注ぐ金銀財宝の雨」等々に、おお乱歩だ、横溝だ! と喜んでしまうのだけど(当然の事ながら、逆なのだ。折角だから「弾は抜いて置いたんだ」もやれよ、などと思うが)その辺の個人的な事情により、評価が底上げされてる可能性もなきにしもあらずだが。
 でもルパンの若い快男児ぶりとかクラリスの気丈さとか、伯爵夫人の怪しさ(実は骨の髄からテロリスト、らしい)なんかは見てて気持ちよかったですけどね。姿勢や動きが優雅でスタイリッシュな感じだし。それからバイプレーヤーでは鋼の頭カバー/スリット付き眼帯の手下レオナールが良かったですね。悪党ながらも苦悩するキャラが。(伯爵夫人との絡みなんか「黒蜥蜴」を思い出しましたよ)しかし、ボーマニャンあたりはちょっと謎。序盤から何でこの人妙にルパンに肩入れするのかなあ、もしかしたら、とは思ったけど、最期はそうでもなくなってるし。途中、色々屈折してるのかとも思わせるのに、その割にずっと朗らかだし。にこにこしながら結構悪逆非道なこともしてるんだけど。(枢機卿とか。あれは「レッド・ドラゴン」ですな)
 で、ラスト。悪い奴はやっぱり生き続け、ルパンの生死には触れてない、というところから「もしかしたら続編作るんじゃないか」と思ったのだけど、パンフ見たらやっぱり企画があるらしい。確か原作の一つ「カリオストロ伯爵夫人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)」はルパンが駆け出しの若い頃の話なので、壮年〜老年のエピソードはまだいくらでもあるだろうし。
 フランスではそれなりに当たったらしいので、続編はまたカルティエの協力が得られるのかなあ、と期待することなのだが――今回の興行成績だと、続編が出来てもあんまり大々的に掛けてくれないかも……;
 ともあれ、もうすぐ上映期間は終わってしまうらしいので、気になっている方は是非。ノルマンディーの断崖は是非とも大画面で見て欲しいもの。