移植医療なるものは

 前にも書いたような気がするけど。
 世の中には色んな考えの方や色んな立場の方がいらっしゃるでしょうが、あたくし個人的には現在の移植医療には賛成しかねます。だから献血もしないしドナー登録もしていない。ドナーカードを持つとしたら「提供しない」に印を付けて持つでしょう。
 なぜ賛成できないか、という理由は、つまりこういうこと。

英滞在1か月以上、臓器などの提供を当面中止(ソースは読売オンライン)
 今回のことは、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が英国滞在1ヶ月以内でも感染の可能性在り、という要因が浮上してきたためだけど、他にもHIVとかC型肝炎をはじめとして、決定的な治療法の見つかってない病気はいくらでもあるわけで。あるいは死病でなくとも、一生抱え込んで付き合って行かなきゃならない感染症はいくつもある。
 輸血ならまだもう少し感染症対策のしようもあるはずだけど(それにしたってウィルス疾患に有効な予防法はまだなかったような)生体組織の移植となると、病因もフレッシュな形で運搬されるだろうことは明か。
 そうした移植医療のリスクについてはあんまり語られてないし、実際調査されて組織的に対応が講じられているという報告もきかない。(私が無知なだけかも知れないが、どこかに情報が出ているならご一報下さい。是非。)その一方でドナー登録だけは一般に広く呼びかけられていることには、やはり納得できない物がある。
 自分の体が自分の不注意・不摂生のせいで病気になるのは、まだ自業自得だやむを得ないと腹を括れる。でもその病気のせいで、誰か別の人まで感染症で苦しむかもしれないと考えると、そこまでの負荷は自分には負いきれないと思うこと。

 確かに、あと数ヶ月の命と宣告された人々が、藁をもつかむ気持ちで移植医療にすがるのは無理からぬことで、それに横槍を挟めるほど私も偉くはないです。
 だけど、「移植すれば助かる」「他に治療法がない」という方向に行ってしまうのもものすごく危うい事じゃなかろうか。本当に他の治療法はないのか、移植医療のリスクは十分に伝えられているのか。移植医療が利用しやすくなっていなければ、他の治療法がもっと研究されて進んでいた可能性はないのか。
 他人の感染症を背負い込む可能性や、一生免疫抑制剤を使うことの影響まで考えると、移植医療という方法はごく過渡的な、最善ではないけどやむを得ない措置、という位置づけをはっきりさせておかないといけないように思いますよ。

 提供する側もされる側も、十分に起こりうる危険や障害について理解の上で行われることなら、それも良いと思うけれど、現状がそうなっているという気はしない。どうしても移植という方法が必要とされるなら、提供者登録の時点で「どういう治療になら」「どの程度」使い物になるかをきちんと調べ、移植に伴う影響や責任についても説明の上で進めるべきではなかろうか。
 「提供する」に印をつけたドナーカードを持った方に訊きたい。あなたの肉体は、他人にあげられるくらいきれいで健康ですか?
 実際、いずれ他人にあげるつもりのものなら、日頃からできるだけ大事に綺麗にしとけ、とも言いたいのですよ。せめてフリマに出す服や雑貨くらいには!