耳ダレマダム

 マダム猫が耳からべたべた水を垂らしているのに気付いたのは先週の土曜の夜であった。行きつけの動物病院は日曜休診である。というわけで一週間先送りとあいなり、ようやく連れて行った次第。
 実は意を決して月曜の午前中にも休みを取り、泣き叫ぶマダムをキャリーバックに籠めて連れて行ったのだが、無情にもドアには「臨時休業予定」の案内が。当然そんなものは土日の間から掲示してあったのであって、日曜に一度チェックしに行っていれば気が付いたはずだったのだった。きいっ。
 ともあれ一週間を耳ダレで固められたまま過ごしたマダムは(いや、膿を拭ったり耳周辺に固まった毛玉を刈りとったりもしたんだけど、瘡蓋になってるのを剥がすような感じになってきたもので、下手に手が出せなかったのだ)また泣き叫びながらキャリーバッグに籠められ、病院行きとあいなった。
 診断は、傷ができたわけではなくて感染症による外耳炎。耳垢の検査の結果、酵母の種類が増えているとのこと。
 「パンでも作る気か君は」と言ったら、獣医さんに「いえまあ常在菌ですので」と言われた。
 飲み薬と耳掃除用の外用薬を出してくれることになったが、とりあえずその場で入念に耳掃除と薬剤塗布および注射をすることになった。元より耳掃除の嫌いなマダムだが、ことこの時は炎症のせいで耳の内側が腫れあがっていたため、抵抗は一通りではなかったのであった。キャリーバッグに抱えこんで耳だけ出して抑えても、綿棒が入ると途端にダッシュをかけるのである。腹肉が垂れてる割には俊敏である。(カラーボックスの上まで跳べないくせに……)しかも診察台で量ったら、彼女の体重は布製プラスチック底板付のキャリーバッグ込みの重量とはいえ、6キロを超えていたのだった。こらちょっとダイエットも本腰入れないとまずいわ……。
 なんとか治療は済んだのだが、実は結構高くついた。ああ保険入っててよかったわ。それでも半額返ってくるだけだけども。
 しかして更なる問題は、彼女には当分毎日2回投薬と、薬液を入れての耳掃除をしなければならないのだった。当然やろうとすると逃亡を図られるのである。
 とりあえずこの先一週間、戦いは続く。