危うしホラー・ジャパネスク

 何のことやらと思うようなタイトルだが、イタリア旅行中に同行者達と話していて判明した事実について。いや、判明した事実というか、世間一般のこと私が知らな過ぎたというか、余計な知識がありすぎたということだろうけども。
 旅行の同行者のうち二人は友人の同僚の方達で、仕事も熱心だが仕事以外の本も読んでいるという、それなりに教養も知識欲もゆとりもある普通の社会人なのだが。
 「天の岩戸伝説」が何かは知らないそうだ。
 となると「天孫降臨」は当然知らないだろうし、下手すると八岐大蛇も倭武尊も知らないだろう。いや、ゲームキャラクターとか妖怪の一種として名前だけは知ってるかもしれないが、そのくらい。てことは、サッカー日本代表チームのマークがなんで三本足の烏なのかも全然知らないのが普通なのだ。
(ちなみにこの話題が出たこの日の宴席で訊いてみたら、中毒的読書人でないお二方は、天岩戸も八咫烏も知らないとのことだった)
 言われてみれば、私はその手の伝奇小説や資料本を好んで読んで来た人間だから知っているが、そういうものに偶々接する機会がなければ、記紀のエピソードなぞ全然知らずに大人になるわけだ。学校でもどこでも、普通の教養としては教えないだろうし。
 しかしそうなると、国生みとか黄泉比良坂とかああいうエピソードを当たり前のように使ってるジャパネスク・ホラーはどうしたらいいのだろう。まあ、ほんとに面白い物は予備知識なしでも充分面白いものではあるけど、ここまで読者に下地がないとなると、日本神話を全然知らないことを前提として注釈を入れるべきか。
 いや、そんなことより――ということは、あと十年二十年過ぎて戦前戦中世代がほぼいなくなったら、いくら尊皇を叫ぶ団体が旗を振ろうと、一般庶民には誰一人としてぴんとこない、ということになるのでは。
 下手すると、キリスト生誕やお釈迦様の「天上天下唯我独尊」よりも、現代日本人には知られてないんじゃなかろうか。

 と、いうことで、ちょっと考えた。
 もしこのトピックに興味をお持ちの方、いらっしゃいましたら、あなたのお近くの方にリサーチしてみていただけないでしょうか。
 質問項目としてはこんな感じ。
1)年齢
2)最終学歴
3)日常的な読書習慣があるか否か、ある場合は読む本のジャンル
4)テレビゲーム、コンピュータゲーム等の習慣があるか否か、ある場合はゲームのジャンル
5)以下の言葉を知っているか。知っている場合はその説明と、もし聞ければどこで知ったか、も。
 5−1:天照大神(あまてらすおおみかみ)
 5−2:天の岩戸(あまのいわと)
 5−3:八岐大蛇(やまたのおろち
 5−4:倭武尊(やまとたけるのみこと)
 5−5:神武天皇(じんむてんのう)
 5−6:黄泉比良坂(よもつひらさか)
 5−7:八咫烏(やたがらす)
 5−8:卑弥呼(ひみこ)

 できれば民俗学系、伝奇系、ホラー系等から縁遠い人に訊いてみてほしいところですな。皆様からのご報告をお待ちしております。m(__)m
 ところで5−8、なんで最後にこんな単語が入ってるかというと、以前街中で通りすがりに聞いた中年女性の会話で、明らかに天照大神卑弥呼を勘違いしてたというのがあったんですね。五十代前後と思しい方だったんですが。
 単なるど忘れとか勘違い/言いまつがいだったのかもしれないけど、若い者には本気でありそうですな。