シオサイト

都心での用事を済ませた後、ふと思い立って汐留へ向かった。ビル街の向こうに見かけるあの妙なビルの内側を見てみたいと、常々思っていたのだった。
んで行ってみました、シオサイト。
ショッピングモールとしては面白い。コンセプト通りに実情がスローフードかどうかはともかくとして、量販店チェーンではちょっとないかも、という店もあって楽しいし。
しかしあのCity Centerと電通ビルの並びは、やはり一種異様なものがある。
もし汐留に行かれる機会があったら、ペデストリアンデッキ上で、あの三角の電通ビルの角のところに立ち、てっぺんを見上げてみるとよろしい。視野のパースが狂ってきた気がしてくらくらするから。
なんというか、誰かが気まぐれに、巨大なガラスの積み木を並べたような眺めなのだった。あまりにも非現実的で、ヒトの世界ではないような。
ビルの上までエレベーターで上がって夕刻の下界を眺めると、東京というのは遠くまで細かな光の列が続く、まことに豪奢な街なのだが。何かひどく危うい印象も受けるのだった。

東京圏は現在世界最大の人口を抱える街である。(一つの市としてはもっと人口の多い都市があるが、「東京圏」は千葉、埼玉、神奈川等の隣県にまで跨がっているので、そういうことになるそうな)
都市の熱により夏場には、雲の垣さえ立ち上る。アスファルトを焼いた陽光はビルの間に上昇気流を生じ、人々の吐く温気を積乱雲へと変え、雷雨となって降り注ぐ。
出雲ならずとも、八雲八重垣立つ都なのだった。
何かが歪んでいるのかもしれないし、これはこれでヒトという種の取りうるある一形態であるのかもしれないが、後者だとしても、おそらくはかなり稀なことなのだろう。
竹の花とか、タマホコリカビの群体とか、そんなところか。
ってそらどっちも生殖フェイズだが、それで何を生むのだか。

ところで「カレッタ汐留」の「カレッタ」とはアカウミガメの学名から取ったのだそうで、中庭には亀甲の形の噴水がある。
亀の甲に乗った世界か。あるいはまどろむ海亀の見る夢か。
そうこうしているうちに、「汐留」ということばからちょっと禍々しい連想が浮かんだ。ネタとして何になるかはまだ不明。