谷中全生庵に「第24回谷中圓朝まつり 三遊亭圓朝コレクション幽霊画一般公開」を見に行く。

 毎年夏に公開されているのは伝え聞いていたのだけども、今年最終日になってようやく見に行けたんである。
 個人のコレクションとあって点数は少ないが、なかなかの充実ぶりでございました。応挙の筆、と伝えられる幽霊画(だって応挙ってお弟子とかにもばりばり描かせて自分の名前で出したりしてるっていうし〜;)があることは有名だけども、他もなかなか。河鍋暁斎とか月岡芳年なんかもあるし。いや、責め絵・残酷絵じゃないんですけどね;むしろ静謐で上品な感じの絵柄のが多いような。中には他の創作活動が全く知られていない無名の画家の作品もあるのだけども、それはそれで面白かったり品が良かったり静かなすごみがあったりするのだった。個人のコレクションてのはそういうところも面白いですな。
 展示会場としてはさして広くもない板張りのお堂に、結構たくさん観覧客が来ていたのだけど、ラフな恰好で来ても幽霊画なんてのを見てるうちになんだか神妙な顔つきになって来ちゃうのが妙でもあり。一回りして気に入ったのをちょっと眺め直してから、図録を購入して炎天の屋外へ。折角だから、というので圓朝師匠のお墓にも手を合わせてきたのだった。
 ところで幽霊画とも圓朝師匠とも関係ないが、全生庵のお墓には、黄金色の観音像がそびえ立っているのだった。夏の陽射しに映えてぴかぴかであった。
 来たときは千駄木の駅から上がってきたのだが、帰りは谷中方面へ抜けることにして反対側へ歩き出したのだった。

朝倉彫塑館を見る

 通り道に朝倉彫塑館があったもので、折角だから入ってみた。美術館通に根強い人気があるところとして、噂は聞いていたのだった。
 ここは朝倉文夫作の数々の銅像のみならず、朝倉の趣味嗜好に任せて作った建物やお庭も面白いのだった。ただ、安全上の問題と補修工事が入る予定ために、木造の住居部分の大半は立ち入り禁止になっていた。まあ、鉄筋コンクリ部分から中庭越しに見える部分からしても、相当愉しげな造りなのだが。
 しかし朝倉文夫と言う方は、これもまた猫狂いの方だったんですなあ。知らずに行ってびっくりですよ。階上へ向かう中二階のサンルームには、猫の彫像ばっかり集めてあるし。のびしてたり首筋持って下げられたり(これは気の毒;)ねずみ銜えて飛び降りようとしてたり、かなり眺め回して骨や筋を知ってるな、という体躯に作ってある。館内撮影禁止だったので、替わりに猫像絵はがきセットを購入してしまいましたよ。
 三楷だか四階部分にあたる屋上庭園に上がり、谷根千一帯から遠く東京・新橋方面、上野方面、新宿方面のビル群を望んで降りてきたことであった。谷中あたりだと今でも他にそれほど大きなビルはないんで、大変に見晴らしはよろしい。しかし朝倉があの邸宅を建てた当時では東京でも有数の高層建築だったのではなかろうか。
 その後谷中銀座への夕やけだんだんを降りてみたが、前日の豪雨のせいか、日照りの暑さのせいか、猫の姿はほとんど見えなかったのだった。唯一階段脇のコンクリに寝ころんでいた黒猫氏を、「きみきみお尻が焼けてしまうぞ」と言いつつなでこしてきたことであった。