猿の名前
『猿の名前』――それは……
密室でベッドに横たわったまま、苦悶の形相を浮かべて息絶えていた老婦人。枕元には彼女の飼っていた仔猿が、主人の死に怯えるように蹲っている。
老婦人の死の間際、隣室にいた者達は、この部屋からうめき声を聞いていた。はっきりとは聞き取れなかったが、犯人を示す手掛かりであろうか。
そして、息絶えた老婦人の手は、猿の方へ延ばされたまま固まっていた。猿はというと、何かを胸元に抱え込んだまま離そうとしない。
老婦人は殺される直前に、唯一信頼できる存在として、この猿に何かを託したのだ。だが怯えきった猿は逃げ回り、誰の手にも捕まえられない。主人の生前は、呼ばれれば誰の手にも寄っていく人なつこい獣だったという話なのに。
せめて、猿の名前が呼べたら。しかし他人との付き合いの薄かった老婦人のこと、猿の名前を知る者はごくわずか、知らされていた者達も、軒並み思い出せないと言う。
どうやって猿の名を、ひいては老婦人のダイイングメッセージを、明らかにすればいいのか――?
――とかいう話のタイトルかしら、「サルネイム」って?
などとしばらく妄想したことであったがやがて、なんで日本語と英語ちゃんぽんだよ、という問題に気付いた。
真相は単に、「サムネイル」の誤記というだけのことなんだが。ちっ。