疑問:極地の棚氷が溶けても海面は上昇しない、か?

 夜半、R30を見ていたら、ゲストの国立極地研究所名誉教授で元南極昭和基地観測隊員の神沼克伊氏の言葉が、後になって気になったのだった。
 曰く(ビデオ撮ってなかったので、私の記憶による大意)、
地球温暖化で南極の氷が溶けているというが、陸地についてはあれは間違い。確かに大きく溶けている所もあるが、あれは海上に浮かんでいる棚氷で、陸地の上の氷については、特に溶けているという様子はない。
 棚氷が溶けているのは、温暖化のせいかもしれないし、海流が変わったせいかもしれないが、浮かんでる氷が溶けても海面は上がりません」

 はて。
 ええと、昔からよく理科クイズで示されますね。グラスに氷を浮かべて水をひたひたに入れると、氷の一部は水面上に出ている。しかし水面上に出ている分が全部溶けても、グラスの水は溢れない。
 確かに、これを日本でやってみるとそうなるかも。(実際には、室温で試みるとそうなる可能性は以外に低いそうだ)それは、氷が0℃近辺では水より密度が低いから(だから浮かび上がっている)で、これが溶けて水になると、密度の高い状態――いってみればより「締まった」状態――になるため、この変化の間で体積が増えることはない→コップからあふれない、と。
 でも極地の海って、0℃よりかなり低温で、液体の水より高密度になってる場合もあるんじゃなかろうか。あるいは低温じゃなくても、自重等で圧縮されて密度が上がっているという可能性は?――と、言うと、極地だからもっと寒いと思うのはあさはかで、液体になってるんだからそんなに低温なわけはない――と言われるかもしれない。でも巨大な氷山ともなると、表面は0℃近辺でも、塊の中心部はもっと低温のまま保たれていて、高密度であったりしないかと。
 ただ、仮にそうだとしても、元々海面に浮いている物なら、氷全体の平均密度は溶媒である海水と浮力で釣り合う程度であるはず。だとしたら、もし溶けたとしても、海面上昇には繋がらないと考えられる。(の、はず。多分;)
 しかして、本当にそうか? という疑問もあるのだった。棚氷の全てが浮力で支えられていたのではなくて、陸地から延びている氷から凍り付いて支えられていた、とか、塊の大きさ故に下は海底に支えてた、とかいう可能性は?
 ――とか書いてるうちに気が付いた。グラスの氷の実験にもあるように、水面に浮かんだ氷が溶ける時よりも、水自体の温度が上がって膨張することの方が、海面上昇への影響が大きいんじゃなかろうか?
 つまり、極地の氷ばっかり気にする以前に、全海水面での温度上昇が、海面上昇を引き起こしていたりはすまいかね。あるいは膨張して海面上昇以前に、蒸発→雲の形成→降水、の流れの方が起こりやすいか。

#後日追記:関連記事がありました。南極・北極の氷山・棚氷の他、氷河等陸水についても検討するデータはあるようです。
環境問題のウソと正解(日経Ecolomy)
このコラムを見る限り結局現時点での結論としては、複数の要因が絡んで複雑なことになっているし、データも十分ではないので、否定はできないけど明言もできない、というところかと。