発生生物学的托卵

ヤマメからニジマス誕生、サバからマグロも可?…海洋大(YOMIURI ONLINE)
ニジマスだけ産むヤマメ開発=「サバからマグロ」実現へ一歩−東京海洋大(時事通信)
ヤマメが両親でも子供はニジマス マグロ生むサバも?(Sankei WEB)

 両親はヤマメなのに生まれてくる子供はみんなニジマス−。東京海洋大学の吉崎悟朗准教授らの研究グループは、ヤマメを代理の両親としてニジマスだけを産ませることに成功した。同じ方法で「クロマグロを産むサバ」などの実現も期待でき、絶滅種の復活や絶滅危惧(きぐ)種の保存にも道が開けるという。14日発行の米科学誌「サイエンス」に発表した。
 吉崎准教授らは3年前に、ヤマメのオスにニジマス精子をつくらせることに成功し、ヤマメを代理父とするニジマスも誕生した。しかし、生まれてくる稚魚のうち完全なニジマスは0・4%(1000匹中4匹)で残りの99・6%はすぐに死んでしまう雑種だった。
 今回は、通常より染色体を多く持っているため自分の精子卵子を作れない3倍体の不妊ヤマメを代理親に使った。精子のもとになる精原細胞をニジマスから抽出し、孵化(ふか)直後の不妊ヤマメに移植。その結果、雄のヤマメはニジマス精子を、雌のヤマメはニジマスの卵を作り、交配で生まれた稚魚の100%がニジマスになった。研究チームによると、代理の両親に異種の子供を産ませることに成功したのは、全動物を通じて世界初。

 いずれ哺乳類、最終的にはヒトにも応用したい技術なんだろうけど、現状では培養/育成技術ですな。もっとも精原細胞の移植で、なんてえのが効果を持つのは、魚類のレベルだとまだ生殖細胞の適応も柔軟――悪く言うと節操なし――だからで、哺乳類には使えないだろうと思うけど。
 ま、精原細胞の移植程度でできることなら、親個体への遺伝的影響もないだろうから、さほど不安な気はしませんが。遺伝子組み換えや細胞融合等々に比べたら、はるかに素朴な技術じゃなかろうか。
 ――にしても、いずれの報道も「サバからマグロも」という可能性に触れているのがなんとも; ニジマスとヤマメは同属の近縁種だけど、マグロとサバとなるとと相当遠いんじゃ;*1 マグロ托卵までには技術的に随分遠い道のりがあると思うんだけど、どうもマグロ増産の夢を語られると弱いのね……;

*1:ニジマスとヤマメはサケ科タイヘイヨウサケ属Oncorhynchusの同属異種、マグロとサバは同じスズキ目サバ科だがそれぞれマグロ属とサバ属。ただしこの分類だけでは、遺伝的な近さは単純に比較できないのだが。