訃報二つ

 夜のニュースはこの2つの訃報で持ちきりであった。

 並べて報じられた訃報だけど、これだけ印象のかけ離れた死に方もあるまい。疑惑の渦中での自殺と、癌闘病中での事故死では。
坂井泉水さんの死についてはまだ不明な点があると取り沙汰されてるようだけど、3メートルの高さから後ろ向きに、というのは覚悟の自殺としては不自然な方法でありましょう。

 魂の安らかならんことを、とは思うけれども――
 松岡農相については、ほんとに魂の安まりどころなどあるのか、というのが正直なところ。
 本当に、首でも括るしかどうしようもないほどに追いつめられたのだろうとは思うけど、ただでさえ仕事の悩みから自殺に走る中高年男性が増えている昨今、こういうのが「責任の取り方」としてまかり通られちゃいかんだろう。遺された者はとんでもなく辛いし、現実的な問題を全て押しつけられて大変なのだから。
 死者を鞭打ちたくはないけど、この死を美化しちゃいけないですよ。何が「侍」なものかと。凝り固まったプライドと身内のしがらみに囚われた挙げ句、一人だけ逃げを打った。この死で誰かを庇い通したことにはなるのかもしれないけど、支持者ならびに権力を(不本意ながら)預けた国民一般への信頼は裏切ることになるとは思わなかったのか。
 逃げるなら逃げても良かったとは思う。ただし、もっと別の方向へ。日頃漠然としか捉えないけど、「死」というのは誰にもどうしようもなく不可逆な現象の呼称であって、「あ、やっぱりやめ!」というのが絶対効かない選択肢なんだと、ちゃんと理解していただろうか。