金曜エンタテイメント新春特別企画 女王蜂

 一応横溝者なのでちゃんと見ましたよ、稲垣金田一第三弾「女王蜂」。
 ヒロイン大堂寺智子を演じる栗山千明は目力がいいですな。母・琴絵ともども「興奮したり取り乱したりすると意識がなくなる」というエキセントリックなキャラクターだし。しかし、それだけにアップになったときの肌荒れが気になった。(ハードスケジュールで疲れてるんか? ちゃんとお手入れしてもらってるんか? 女優さんに肌荒れは大敵よっ!)
 舞台となった建物とか、風景とか美術は非常にいいですな。(月琴島の大堂寺家の邸なんか、CGとは思うんだがよくこんな豪奢にして中和折衷みたいな妙な邸を造りましたな、という)
 しかし、何故か、なんだか食い足りない。横溝にしては、起っている事件の不可思議さにしては、画面のおどろおどろしさ足りないというか。
 何が足りないのか、というとよくは分からないんだけども……暗さかな? 画面にも、ほんとの暗がりはほとんどなかったようだし。あと、恐怖に怯える智子以外の部分の無気味さの演出とか。キャラクターの中でも特に怪しげ恐ろしげな風貌の筈の九十九龍馬も、乱れロンゲに髭はやしただけの割と普通の中年に見えるし。(杉本哲太が付け髭付けただけ、という声はそっちこっちから)むしろ多門連太郎役のミッチーの方がよほど怪しげ。まあこれは、当初犯人を疑わせる役所だからそれでもいいんだろうけど……それだけに、本当は善意の人でした、という好青年ぶりが実に似合わない。
 何か、横溝作品らしい恐怖と無気味さ(と、この話の場合因縁話に絡んだ哀しみ)の演出を欠いているような気がするんだな。恐ろしげな道具立てはいろいろしているにも関わらず。
 ――それとも、これは私がスレてちょっとやそっとの演出には感心しなくなっちゃったと言う事かしら。むむむう;

 ところでラストの展開を見て、まず感じたのが「これはそのまんま[『三つ首塔 (角川文庫)』と同じ構図だよなあ」などであったという偏ったわたくし。まあ横溝正史作品には往々にしてそういうことがある。ものすごく忙しい大衆小説の流行作家であったということや、メロドラマの王道のお約束に従うと言う理由に拠るのだと思うが。そういや「謎の行者」の九十九龍馬の設定辺りはそっくりなのが「女怪」に出て来るしね。