病院にて

 病院で、検査用ガウン姿の人々をたくさん見る。
 で、気が付いたのは、座って待ってる殿方の多くは、無意識のうちに膝を大きく開いちゃうということ。人によっては、ベルトこそ結んであるものの、ガウンの合わせには結構無頓着だったり。
 膝丈あるかないかくらいの検査用ガウンでこれをやると、ほとんど内股まで丸見えなんだけども。
 で、偶々こういう姿の正面に座ってしまった人間としては、どうしたらいいのだろう、と考えた。
 おそらく、この人達もきちんと服を着込んでいればそれなりに礼節を知った成人男性であろうから、これはゆったりした恰好で衆人環視の前にいる状況に馴れないが故の過失であろう――と推測し、見ない振りをしてやるべきか。
 あるいは、なかなか着る機会のない開放的な恰好になっていて、しかも、周囲もそういうものだと許容してくれる状況にあるのだから、ここぞとばかりに弛緩しまくった状況を楽しんでいるのか――だとしたら、寛大な気持ちで微笑ましく眺めてさしあげるべきであろうか。光景としては微笑ましくないけど。
 あるいは、開放的な気分になった余り、周囲にいる異性に対して太腿を晒し、普段は試してみられない「ほーれみてごらん」な露出魔の快楽を疑似体験しようとしているか――だとしたら(上記の可能性が排除できない以上、怒ったり不快な様子を示したりするほどのことでもないし)、一応のお愛想として、形ばかりでも恥じらったような気まずそうな表情を現してやるべきか。
 しかし、実は私が内心では、一瞬屈み込んでガウンの下へ視線をやってからしばらくくすくす笑いを浮かべてやろうか、という誘惑と戦っていたことは内緒だ。いや当然皆さん下着は着けてるでしょうし、何か見えるとは思わないんですけどさ。