人身事故

 いや私ではなくて、通勤電車が。

 いつもよりやや早いくらいの電車に乗っていたら、突然止まったかと思うと、「先の駅で人身事故がありました関係で、全線運転を見合わせます」ということにあいなった。とりあえず先の最寄り駅までは行ってくれたけど、その後折り返し運転。しかし状況がどう変わるかすぐには分からないもので、通路にもホームにもヒトが溢れ、揃っていらいらと携帯を使うのだった。携帯が定着してからこういうときの光景も変わりましたね。公衆電話に並ぶ必要はないし。一見静かにしてる人も、実は凄い勢いでメール打ってたりしてね。
 さて、バスかタクシーで事故のあった駅より先へ行けば、とも考えたけど、結局私は通過してきたばかりの乗換駅まで戻り、別路線経由で出勤したのだった。通常より約一時間遅れ。
 まあ振り替え輸送のチケットも出たし遅延証明出たから遅刻扱いじゃないし、幸いそうとんでもなく忙しい時期じゃなかったからいいけどね。
 ところで車中で聞こえてきた乗務員の連絡によると、事故現場にはレスキュー隊が到着したが、救出困難な状況で復旧の目処が立たないとのこと。
 えーと。救出? てことは。
 生きてるんかい。
 いや、縁起でもない、冷血動物が、と言われるかもしれんけどね、この時既に、事故が起こってからかれこれ40分は過ぎてたんである。電車に当たって一瞬で亡くなられるのもひどい話だけど、電車に潰されただか挟まれただかしたまま40分以上も、ってなどうよ、と。
 前にも書いたけども、被害者がきっぱりお亡くなりになってると、電車は30分前後で動くようになるそうです。長引いてるときはまだ希望があって、でもそれだけに迂闊に動かせない、かえって厳しい状況ということなんですな。
 どのぐらいの規模の事故だったか、アナウンスだけでは分からないことだけど、一瞬の不運から色んな人にえらい影響が出ることです。何十分も怪我したまま待つしかない被害者も、ここからどうやったら無事に引っ張り出せるんだよ、と頭絞らなきゃいけないレスキュー隊員も、変則的な運行状況で列車のやりくりも乗客の誘導もしなきゃいけない駅員さんも、みんなそれぞれとんでもなく大変だわ。「最悪だよー」なんてつぶやいてる乗客なんてまだ呑気なものか。
*後日追記:ニュースによると、原因は偶発的な事故ではなくて飛び込みだったそうな。こういう事例を見ると、自殺の方法として電車への飛び込みはお勧め出来ない事が良く分かりますね。一瞬で死ねる場合ばかりでもなく、4、50分も電車に挟まれたまま生き続けるかと思うと……
 だからさ、死にたくなっても飛び込みは止めてってば頼むから。巻き添え食う乗客もだけど、片付ける人々なんかそら大変なんだからよ。