Winnyについて、追記。

 その後のid:oono_nさんのコメントを読んで、つらつら考えたのだが。
 これは製造物責任の問題ということになるんじゃないかな、と。
 いや、PL法ではメディアに焼かれていないソフトウェア自体は対象とならないそうだし、そもWinnyは無償配付だから、「商品」たる製造物じゃないわけだけど。
 でもPL法の基盤になった民法上の損害賠償の考え方からすると、配付された製品の使用によって「犯罪の容疑者となり名誉や身体の自由を損なわれた、または損害賠償を請求された」という不利益を被った場合にも、ソフトウェアの配付に際してそうした危険性への配慮を怠った、として制作者/配付者を訴えることもできるわけですな。
 勿論、優れた技術の考案者が、当初からその技術の危険性に気づいているとは限らない。ただしそれならそれで、配付を始めた後の段階で、技術上の問題点以外の問題についても気づいた者が指摘するべきだったし、開発/配付者も「こういう使い方をするとまずいことになるよ」という注意書きをする等の対策はするべきだった。
 このWinny事件に関して言えば、使用者のフィードバックを受け、違法使用に気づきつつ改良を繰り返していた、ということだから明らかな問題はある。つまり、開発者もフィードバックする使用者も、違法性を問われたらお互いヤバい事になる、という意識を持っていなかったらしい。(あるいは自分だけは逃げおおせるつもりだったのか)理想のために犯罪容疑者とされ裁判で争う事になっても構わない、という覚悟があるようには見えないし。(もしそうだったら、むしろ天晴れなことではある。事の善悪はともかくとして、だけど)
 どうも、技術的は優れていても理念の成熟が共なわない、子供っぽいギャングを連想することです。

 で、起訴された金子氏の今後についてですが。
 有罪になるか否かについては、私個人は正直言ってわりとどうでもいいと思ってます。
 や、全く無罪放免でも、何年もの実刑判決でもいいのか、と訊かれると難しいけど、どっちだとしてもこの方の人生は、もうとっくに平穏無事ではなくなってると思うのですね。無罪放免になったとしても、損害を被った著作権者にとっては快くない(どころかはっきり恨みを買ったかな)だろうし、可能性があれば不用意な製造物の配付をしたことに対する損害賠償を請求されるかもしれない。刑事が済んでも民事訴訟の可能性は残ってるでしょう。
 Winnyの使用で著作権侵害の罪に問われた容疑者達についても上で述べた通り。京都の19歳の少年なんかも、これ一件で人生変わっちゃったんでしょうね。金子氏だけが悪いとも言えないだろうけど、全く責任がないとも言い難い。
 裁判で実刑判決が出る可能性は低いだろうけど、賠償金だけで済んだとしても結構大変だろうし、何より甘い考えで騒ぎを大きくした人間への世間的な評価は決して良かないでしょう。
 それでも、前科者だろうと優れた技術者だから、ということで評価し、仕事をくれる人はいるかもしれない。(おそらくいるだろうとは思う)
 とはいえ、まともな事業者なら彼の前科を警戒しないわけがないでしょう。理念に関しては紐付きのまま、技術力だけを便利に使われる、という可能性が高い気がしますね。
 それはそれで、幸せなことなのかもしれないけど。でも他人の恨みを買った事を忘れて、心穏やかな生活を取り戻せるかどうかは、まだ何とも言えないですね。