大阪の犬ブルセラ病集団感染事件その後
どうもなってない、というか、状況は悪化/混乱してるらしい。
#混乱している現状と、そのためにここで「お詫び」を出すという事情は理解できますが、この項目の書き出しはちょっとなんとかしたほうが良いんじゃないでしょうか;
「最大限の努力をしてきました。」
なんて過去形で書かれると、「しかし力及ばず――」とかいうフレーズを連想してしまうのが人情ってものです。
今のところ感染した犬たちはまだ生存してる(か、もし処分されていたとしてもそれを確認はされてない)のでしょうし。
とりあえず、獣医師からも協力の声が上がっているそうですから、一般に協力を求めるためには、
ということを確認/公報したほうがいいと思いますよ。
で、協力を申し出ている獣医師団体のブログがこちら↓。
- またたび獣医師団 大阪ブルせラ犬Brucella canis救命チーム発足!(表記ママ。いいけどどうしてこの項目、尽く記載が「ブルせラ」なんでしょう?;)
元よりイヌ流産菌(Brucella canis)自体は、通常の接触では人への感染力の強い病原菌じゃないんですな。(ヒトのマルタ熱として知られる病原菌はヤギ流産菌B. melitensis)それに、発症すると発熱を繰り返して厄介ではあるけど、治療法はあるし発症後の死亡率も2%程度で、病人や乳幼児・老人でもなければそれほど危険度の高い伝染病じゃないんじゃないかと。
通常の飼育犬でも1〜6%程度感染が見られるということなので、伝染病予防という考え方から言えばこの処分決定はすごく変らしい。(例えればパスツレラ予防のために猫一斉処分、とかみたいなものかな?)
つまり、行政では面倒見切れないから片付けます、ということなんでしょうかね。
大阪府の決定は凄く短絡的だし、救援活動には協力したいと思うことだけども、どうも現状の確認と求められている対応が良く分からないのが心配ではあります。
広くネットで広報して協力を求めるにしても、まず現状がどうなってるのかを確認することは現場の当事者にしかできないことですしね。
とりあえず、きちんとした確認情報の公開を待ちたいところです。
#追記:大阪府の公報サイトがありました。
大阪府ブルセラ病感染犬等救援本部
検索で見つかりやすくなったところをみると、報道などで関心が集まって増えてリンクされることが多くなったんじゃないかな。
問題はここの2/7の第2回救援本部会議に関する概要。(pdfファイル)
第1回会議で感染の危険が取り上げられてるのを受けてなのかとは思うけども、その下の項目「インフォメーション 犬のブルセラ病について」のページでは
と書いてあるのをみるとやっぱり得心がいかない。感染犬は移動しにくいし譲渡もできないから、というんで早く片付けたがってるように見える。要は治療して完治/保菌してないことが確認されてから譲渡すればいいだけだと思うんだけど、その手間を惜しんでるような。
#更に追記:
どうも混乱と運動の歯切れの悪さは、現場ボランティアにも「処分やむなし」の判断になってきてる人もいるという状況によるらしい。
和泉ブルセラ犬救済ボランティアネット(仮)
混乱への対応のためコンテンツの削除などもあったようです。ここの管理人さんの個人ブログコメント欄もだいぶ紛糾してます。
チャリボラな日々
うーん。
要は、陽性の犬をずっと養っておけない要因としては
- 高額な抗生物質代等、治療費は出せるのか。府の行政には負担になりすぎる。
- 人への感染→死亡の危険性を食い止めきれるのか。
- 隔離飼育のために移動するとしても、安全性の責任をとりきれるのか→民間の愛護団体の所有に戻すのには問題があるのでは。
ただね。読んでいくと、この管理人さんや処分やむなしとする人々の言動も、あまり冷静ではないです。勿論現場で犬達を見ているから追いつめられたような気持ちになってしまう、というのもあるのでしょうけれど。
抗生物質でブルセラが根絶できるという保証はない(そういうデータがみつからない)とか、たとえ発症した人での死亡率が1%や2%でも危険があるなら外に出すべきじゃない、と言われると一瞬そうか、と思うかもしれない。
でも実際、深刻な危険性を示すデータもまたないわけです、B.canisについては。1%でも死ぬなら危険、と思うかも知れないけど、発症率自体も低いだろうし、その程度の致死率の病原菌は他にも一般の日常的にあるでしょう。
科学的な危険と許容のバランスを計り損ねてる。治療できる、と言ってるのは一部の獣医師だけだという声もあるけど、そもそも日本の獣医師も行政も、ブルセラ症の危険自体に直面した経験がほとんどないんじゃないですかね。法律も対応マニュアルも、「この程度なら」という仮説に基づいて作られてるだけで、実際の運用で不合理なことは山ほど出てくると思うんだけど。
もちろん、どう考えても現実的にこれだけの感染犬を養うのは無理だ、ということもありうるとは思いますが。そのためにはまず、治療費、施設、備品、人手、取り扱いの注意事項など具体的に試算してみて、その上で無理だ、ということを公表したほうが良いと思う。
なんだかね、「私達はやむを得ずこう考えました」というのがいずれも感情論なんですよ。この混乱と犬たちの現場の酷さで打ちひしがれてるのかもしれませんが。
でも、ここで受け入れるのに具体的な障害の状況を示さないまま「保護失敗」という結果に終わらせるのは、団体と個人の信用に関わるでしょう。
処分を受け入れるにせよ、「ここまでやった、でも実際はこれだけないとだめだった」ということを、報告していくのも、社会的な活動としては大事なことなんじゃないでしょうか。処分しちゃってから「うちの敷地に来てくれても良かったのに」とか「ボランティアに行けたのに」とか「お金の問題ならかき集められたのに」という声が出ても、犬は生き返らないんですから。