え。「独白するユニバーサル横メルカトル」が?

 今年の「このミス」国内1位を取っちゃったって、ほんと?;

 いや、何にせよ受賞はおめでたい。私も大変好きな作品集だし面白いことに疑いはない。
 だけども、そうであってさえ、なんだかすっきりしない。
 要は、ミステリ的な趣向は用いているけれども、この作品集が「このミステリーがすごい!」という企画に沿っているのか、ということだな。ミステリとしての巧緻さよりも圧倒的にホラーの味わいが全面に出ている本だし、ミステリとしての部分を評価するならもっと適当な本があるだろうと思う。
 それに、短編集がここでトップを取っちゃうというのもどうかと。恐らく作品単位で訊ねたなら、各投票者が評価した作品はかなりばらけるんじゃないだろうか。本1冊毎のランキングの他に、長短編作品を分けた作品毎のランキングとかもやってみるべきだったんじゃなかろうか。
 この本が出版界の表でも評価されるのは喜ばしいことだけれど(そしてそれは、「こんなどす黒い話を世の中に広めてよいものかうふふふふ」といううしろめたさを含めたヨロコビではあるけれど)どうも現在の日本の出版界には、この本に与えられるべき正しい賞というのが存在しないような気がするな。
 出来ることなら何か、新人賞ではなく、その年度に発表された作品を対象とした怪奇/幻想文学文学賞というのが設定されるべきなのかも。